賃貸住宅の庭に物置や砂利敷きなどを設ける場合|用法の遵守・原状回復・費用の償還(民法)
賃貸の戸建てやテラスハウスでは、庭の使い方を工夫したいと考えることがあります。借りている物件の庭は貸主の所有物であり、何をどこまで変えられるかは、賃貸借契約と民法の規定によって決まります。民法の条文を引用し、工事の前と退去の時に関わる規定を整理しています。
最終更新日:2026-10-17
本ページの見方
- 引用している条文は、e-Gov法令検索で公開されている現行の条文をそのまま転記したものです。読みやすさを考慮して省略した箇所は「(中略)」と表記しています。
- 条文に定められている事項と、個別の敷地・計画についての判断は異なります。当サイトは個別の案件について適法・違法の判定を行っていません。
- 自治体や道路管理者ごとに異なる手続きの様式・手数料・処理期間は、本ページには記載していません(条文に定められている数値のみを扱っています)。
根拠となる条文
第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。(中略)借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。出典:e-Gov法令検索(民法)
第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。(中略)借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。出典:e-Gov法令検索(民法)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。出典:e-Gov法令検索(民法)
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。出典:e-Gov法令検索(民法)
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。出典:e-Gov法令検索(民法)
賃貸住宅の庭の工事に関わる民法の規定
出典:民法 第594条・第599条・第606条・第608条・第616条・第621条・第622条(e-Gov法令検索)。賃貸借契約に特約がある場合は、その内容もあわせて確認が必要です。
| 場面 | 民法の規定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 庭の使い方 | 契約又は目的物の性質によって定まった用法に従って使用する | 第616条・第594条第1項 |
| 設置した物(退去時) | 附属させた物を収去する義務を負う(分離できない物・分離に過分の費用を要する物を除く) | 第622条・第599条第1項 |
| 設置した物(契約中) | 附属させた物を収去することができる | 第622条・第599条第2項 |
| 損傷(退去時) | 損傷を原状に復する義務を負う。通常の使用による損耗と経年変化は除く | 第621条 |
| 修繕 | 賃貸人は使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(賃借人の責めに帰すべき事由による場合を除く) | 第606条第1項 |
| 必要費 | 賃貸人の負担に属する必要費は、直ちに償還を請求できる | 第608条第1項 |
| 有益費 | 賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い償還される | 第608条第2項 |
庭の使い方は、契約で定まった用法に従う
民法第616条は第594条第1項を賃貸借に準用しており、賃借人は「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い」使用しなければなりません。賃貸借契約書に庭の使い方や工作物の設置についての定めがある場合は、それが用法の内容になります。物置を置く、地面を掘る、樹木を植えたり切ったりするといった計画は、契約書を確認したうえで、事前に貸主や管理会社の承諾を得ておくと確実です。
設置した物は、退去時に収去するのが原則
第622条は第599条第1項・第2項を賃貸借に準用しています。賃借人は、借りた後に附属させた物を、賃貸借が終了したときに収去する義務を負い、契約中も収去することができます。ただし、借りている物から分離することができない物や、分離するのに過分の費用を要する物は除かれています。置き型の物置やプランターのように取り外せる物と、地面に固定したコンクリートのように取り外しにくい物とでは、退去時の扱いが変わり得ます。
原状回復の対象から、通常の損耗と経年変化は除かれている
第621条は、賃借人は借りた後に生じた損傷を、賃貸借が終了したときに原状に復する義務を負うと定め、かっこ書きで「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を損傷から除いています。庭で何が通常の使用による損耗に当たるかは条文に例示がありません。国土交通省は、退去時の原状回復をめぐるトラブルについて「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。
貸主が負担すべき費用と、価値を高める費用は扱いが分かれる
第608条第1項は、賃借人が賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、直ちに償還を請求できると定めています。第2項は、有益費を支出したときは、賃貸借の終了の時に第196条第2項の規定に従って償還されるとしています。第606条第1項により、使用及び収益に必要な修繕は賃貸人の義務とされています。庭の工事が必要費・有益費のどちらに当たるか、償還の対象になるかは、契約の特約や個別の事情で変わるため、工事の前に費用の扱いを貸主と書面で取り決めておくことが重要です。
本ページで判定できない事項
個別の工事が契約上認められるか、退去時に原状回復や収去が必要か、費用の償還を受けられるかは、契約の内容や工事の内容によって判断が変わるため、当サイトでは判定していません。貸主や管理会社と合意できない場合は、消費者ホットライン(188)などの相談窓口をご利用いただけます。
賃貸住宅の庭で工事や設置をする前に確認すべき事項
- 1賃貸借契約書で、庭の使い方・工作物の設置・原状回復についての定めを確認する
- 2工事や設置の前に、貸主や管理会社の承諾を書面で得る
- 3退去時に撤去が必要か、残してよいかを事前に取り決める
- 4費用を誰が負担するか、償還の対象になるかを書面で取り決める
- 5入居時と工事前の庭の状態を、日付入りの写真で記録しておく
- 6地面を掘る工事では、配管や境界標の位置を貸主に確認する
関連する工事の解説
よくある質問
Q賃貸の庭に物置を置いてもよいですか。▼
Q退去するとき、庭に設置した物は撤去しなければなりませんか。▼
Q自分の費用で庭を整えた場合、費用を返してもらえますか。▼
出典
条文は2026-10-17時点でe-Gov法令検索に掲載されていた内容を確認して転記しています。法令は改正されることがあるため、実際の手続きの前には最新の条文と、所管する窓口の案内をご確認ください。