隣との境界がはっきりしない場合の確認方法|不動産登記法の筆界特定制度と、境界標を動かすことの禁止
境界沿いに塀やフェンスを設ける工事、古いブロック塀を撤去して新しくする工事では、境界線の位置がはっきりしていることが前提になります。境界標が見当たらない、隣地の所有者と認識が食い違うといった場合に使える公的な手続きとして、不動産登記法の筆界特定制度があります。条文を引用し、制度の要点と工事の際の注意点を整理しています。
最終更新日:2026-10-17
本ページの見方
- 引用している条文は、e-Gov法令検索で公開されている現行の条文をそのまま転記したものです。読みやすさを考慮して省略した箇所は「(中略)」と表記しています。
- 条文に定められている事項と、個別の敷地・計画についての判断は異なります。当サイトは個別の案件について適法・違法の判定を行っていません。
- 自治体や道路管理者ごとに異なる手続きの様式・手数料・処理期間は、本ページには記載していません(条文に定められている数値のみを扱っています)。
根拠となる条文
一 筆界表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。二 筆界特定一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。出典:e-Gov法令検索(不動産登記法)
土地の所有権登記名義人等は、筆界特定登記官に対し、当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について、筆界特定の申請をすることができる。出典:e-Gov法令検索(不動産登記法)
筆界特定登記官は、前条の規定により筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見を踏まえ、登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して、対象土地の筆界特定をし、その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。出典:e-Gov法令検索(不動産登記法)
筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。出典:e-Gov法令検索(不動産登記法)
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。出典:e-Gov法令検索(刑法)
筆界特定制度の要点
出典:不動産登記法 第123条・第131条・第143条・第148条、刑法 第262条の2(e-Gov法令検索)、法務省「筆界特定制度」。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 筆界 | 土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点と、それらを結ぶ直線 | 不動産登記法第123条第1号 |
| 筆界特定 | 筆界の現地における位置を特定すること(特定できないときは位置の範囲を特定) | 同第2号 |
| 申請できる人 | 土地の所有権登記名義人等(相続人などの一般承継人を含む) | 同第131条第1項・第123条第5号 |
| 申請先 | 対象の土地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官 | 同第131条、法務省Q&A |
| 考慮される事情 | 登記記録・地図、地形・面積、工作物・囲障・境界標の有無と設置の経緯など | 同第143条第1項 |
| 判決との関係 | 筆界確定訴訟の判決が確定すると、抵触する範囲で筆界特定は効力を失う | 同第148条 |
| 境界標の損壊・移動 | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 刑法第262条の2 |
「筆界」は、所有権の範囲とは別の概念として扱われる
不動産登記法第123条第1号は、筆界を、土地が登記された時にその境を構成するものとされた点と直線と定義しています。法務省の説明では、筆界は所有者同士の合意などによって変更することはできず、一般にいう「境界」が所有権の範囲を画する線という意味で使われる場合には、筆界とは異なる概念になるとされています。また、筆界特定制度は土地の所有権がどこまであるのかを特定するものではないと説明されています。外構工事ではどこまでが自分の土地かが問題になりますが、その前提となる公的な線として筆界があります。
筆界特定は、法務局の筆界特定登記官が行う
第131条第1項は、土地の所有権登記名義人等が、筆界特定登記官に対し、隣接する土地との筆界について筆界特定の申請をすることができると定めています。第143条第1項は、筆界調査委員の意見を踏まえ、登記記録や地図のほか、工作物・囲障・境界標の有無やその設置の経緯などを総合的に考慮して筆界特定をすると定めています。法務省は、筆界特定制度を活用することで、隣人同士で裁判をしなくても筆界をめぐる問題の解決を図ることができると説明しています。結果に納得できない場合は、後から裁判で争うこともでき、判決が確定すると抵触する範囲で筆界特定は効力を失います(第148条)。
工事で境界標を動かす場合は、事前に位置を記録し、隣地の所有者と確認する
刑法第262条の2は、境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により土地の境界を認識することができないようにした者を、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。ブロック塀の撤去や基礎の掘削で境界標の近くを工事する場合は、着工前に境界標の位置を写真と図面で記録し、隣地の所有者と位置を確認しておくと確実です。工事で境界標が動いたり失われたりするおそれがある場合の扱いは、施工業者と事前に取り決めておく必要があります。
本ページで判定できない事項
個別の土地の筆界や所有権の範囲がどこにあるか、どの手続きを選ぶべきかは、当サイトでは判定していません。境界の測量や境界標の設置は土地家屋調査士の業務領域であり、筆界特定の手続きについては対象の土地を管轄する法務局でご確認いただけます。隣地との囲障の費用分担については、境界の塀の費用のページで整理しています。
境界沿いの外構工事の前に確認すべき事項
- 1境界標(コンクリート杭・金属プレートなど)の有無と位置を、現地と測量図で確認する
- 2隣地の所有者と、境界線の位置について認識が一致しているかを確認する
- 3境界標の近くを工事する場合、着工前に位置を写真と図面で記録する
- 4工事で境界標が動いたり失われたりした場合の対応を、施工業者と事前に取り決める
- 5境界の位置に争いがある場合は、工事を急がず、土地家屋調査士や法務局に相談する
- 6塀やフェンスを境界線上に設けるか、自分の敷地内に設けるかを図面で確認する
関連する工事の解説
よくある質問
Q隣との境界がわからない場合、どこに相談すればよいですか。▼
Q筆界特定の結果で、自分の土地の範囲が決まりますか。▼
Q工事のじゃまになる境界標を一時的に外してもよいですか。▼
出典
条文は2026-10-17時点でe-Gov法令検索に掲載されていた内容を確認して転記しています。法令は改正されることがあるため、実際の手続きの前には最新の条文と、所管する窓口の案内をご確認ください。